Vaporwaveという音楽ジャンルをご存知でしょうか？
私もよく分からないまま、聴き続けているこの音楽ジャンル。
不思議な魔力があるんです。
Vaporwaveって何？
Vaporwaveがどんな音楽なのかというと、一様には表現し辛いです。
音楽的には、イージーリスニングやAORなどをサンプリングし、テンポは遅めのBPM。
もはやそれが曲なのかも分からないようなブツ切りのループであったり、ボーカルはピッチが限りなく低く歪められていたり。
アートワークは、懐かしさを感じるCGやビデオ(VHS)、それから謎の彫刻やおかしな日本語などが散りばめられています。
一見、無秩序な混乱を感じさせるようなものに見えるがジャンル全体で俯瞰するとそれには一定の美学が備わっているようにも感じられます。
Wikipediaによれば、
2010年代初頭にWeb上の音楽コミュニティから生まれた音楽のジャンルである。過去に大量生産されて忘れ去られた人工物や技術への郷愁、消費資本主義や大衆文化、1980年代のヤッピー文化、ニューエイジへの批評や風刺として特徴づけられる[2][7]。基本的にパソコンとDAWを用いて、素材の加工と切り貼りだけで制作される。
https://ja.wikipedia.org/wiki/ヴェイパーウェイヴ
とのこと。
余計なんだか分からなくなりますね。
知識もほとんどないわたしの主観でいうと、なんだか「もやのような雰囲気」をまとった音楽、だと勝手に解釈しています。
そしてそれが、なんだか聴いていて心地いいんです。
メランコリックで、甘い気持ちをくすぐられるんです。
感じ方は人それぞれだと思いますが、敢えて誤解を恐れずに言うと、Vaporwaveはわたしの記憶の中の忘れ去られたある箇所に、触れることができる唯一の音楽なのではないかと思っています。
それはある意味では夢のようなものであり、そしてある意味では走馬灯のようなものだと私は考えています。
Vaporwaveはわたしにとってそんな音楽なんです。
うまくは言えないんですが、ぜひ一度聴いてみてください。
わたしと、Vaporwaveとの出会い
わたしが、Vaporwaveと出会ったのは、たしか2016年くらいのことではないかと思います。
シティポップにはまり、そこからFUTURE FUNKを知り、Vaporwaveへとたどり着いたのだと思います。
仕事に行き詰まり、当時休みもなく働いていた自分は、夜中に帰宅してお酒を飲みながら音楽を聴く時間だけが唯一の心休まる時間でした。
その頃わたしは、だんだん好きだった音楽を聴くことに疲れてしまうようになっていました。
特に歌モノなどが聴きづらくなり、歌がないものを好むようになってきていました。
Vaporwaveとの出会いはそんな時のことでした。
Macintosh Plus『Floral Shoppe』の「リサフランク420/現代のコンピュー」を聴いた時の衝撃は今でも忘れられません。
私は生まれてきた時代のためかはじめてビートルズを聴いた時も、はじめてセックスピストルズを聴いた時も、感動することができませんでした。
ですが、わたしはその時、はじめてビートルズやセックスピストルズが世に出てきた時にその時代を感受できた人々の幸福を味わうことができたような気がしたんです。
私の脳は異様な興奮と恍惚に包まれていました。
その音楽は、はじめて聴くはずのわたしにとってとても懐かしく感じました。
一聴して、音楽なのかも怪しく感じるこの「リサフランク420/現代のコンピュー」のループは、不思議と私の耳にすっと入って、嫌な感じはしませんでした。
自分がこれまで聴いてきた音楽というものとはどこか異なる、その音楽をわたしは何度も何度も繰り返して聴きました。
そこでわたしは、その音楽がわたしに与える影響が、夢の中に表れる見たことがあるようでない景色や、生活の中で脳裏をふとよぎる幼い頃の記憶の断片のようなものと似ていることに気がつきました。
それを享受することは、とても甘く、快い感覚をわたしにもたらすものだとわたしは確信しました。
そしてそれは、わたしが追い求めていた理想の音楽であることを、教えてくれました。
それから私は、Vaporwaveを聴き漁るようになりました。
そんな体験からはや8年ほど。
わたしは日々、もう一度あの体験がしたいと、毎夜Vaporwaveを探しているんです。
Macintosh Plus『Floral Shoppe』「リサフランク420/現代のコンピュー」
視聴はVektroidのBandcampページからどうぞ。
Macintosh Plusはアメリカのアーティスト・Vektroidの別名義。
そのほかの名義はESC不在、情報デスクVIRTUAL、Laserdisc Visionsなど多数。
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