BtoB営業、特に長期的な関係構築が求められる業界で「なかなか信頼してもらえない」「競合他社に負け続けている」と悩んでいませんか?
私は福祉業界の営業に転職した際、前任者のマイナスイメージと競合他社の圧倒的な接触回数の差に直面しました。商品力では差がつかない業界で、どうやって「個人の信頼」を築き、競合に勝っていくか。
3年間の試行錯誤で身につけた「長期信頼構築の5つのスキル」と、前任超え・競合に勝つための具体的手法をお伝えします。
なぜBtoB(toC)営業では「個人の信頼」が商品力を上回るのか

商品差別化が困難な業界の現実
福祉用具業界では、扱う商品に大きな差がありません。例えば、福祉用具レンタルや販売の会社を例に考えてみましょう。車椅子もベッドも、基本的な機能や価格帯は各社ほぼ同等です。
このような業界では:
- 商品説明では差別化できない
- 価格競争にも限界がある
- 個人の信頼が唯一の差別化要素
結果として、「この人から買いたい」という個人への信頼が、受注を左右する最重要ファクターになります。
複数関係者の調整が求められる複雑さ
さらに、BtoB営業(特にBtoBtoC)では、関係者が複数存在します:
- 私(営業)
- 取引先(ケアマネージャーなど)
- 各種関係者(PT、OT、看護師など)
- 紹介顧客(利用者)
- その家族
これら全員の想いや職掌を理解し、最適解を見つけ出す調整力が必要です。この複雑さが、個人の信頼の重要性をさらに高めています。
BtoB(toC)営業転換にあたっての重要ポイントをまとめた記事もチェックしてみてください。
【失敗談あり!】BtoC営業からBtoB営業への転換で学んだ5つの重要ポイント
前任や競合他社に差をつけられた状況からの逆転法

前任者のイメージを活用・改善する戦略
転職や引き継ぎの際、避けて通れないのが「前任者のイメージ」です。
マイナス前任者の場合:
- まずは徹底的にヒアリング
- 前任者の何が問題だったのか
- 取引先が求めていたことは何か
- 具体的にどんなトラブルがあったか
- 意識的に逆の行動を取る
- 前任者が雑だった→徹底的に丁寧に
- 前任者が遅かった→圧倒的なスピードで
- 前任者が一方的だった→相手の話を十分に聞く
プラス前任者の場合:
- 前任者を目指していることを明確に伝える
- 「○○さんのようになりたい」と素直に表現
- 前任者の良かった点を具体的に挙げる
- 取引先に教育をお願いする
- 「ご指導いただけませんか」と謙虚に依頼
- 取引先を「先生」のポジションに置く
接触回数の圧倒的差を埋める方法
既存顧客がいない状況では、競合他社のトップスリーとの接触回数に圧倒的な差があります。
この差を埋めるには:
- 量より質:1回の訪問で複数の価値を提供
- 継続的なフォロー:小さなことでも定期的に連絡
- 反応スピード:他社ができない速度で対応
長期信頼構築に必要な5つのスキル

①想像力:複数の関係者と展開の分岐を読み切る
長期信頼構築で最も重要なのが「想像力」です。ただし、これは相手の気持ちを想像するという単純なものではありません。
求められる想像力:
- その後の展開の分岐をいくつ読み切れるか
- 複数人の関係者それぞれの考えがどのようなものか
- 最終的な妥協案はどの辺りになるか
- そこに辿り着くための行動は何が必要か
実践例:
ある利用者の福祉用具選定で、5人の関係者(私、ケアマネ、関係者、利用者、家族)がいたとします。
それぞれの想い:
- ケアマネ:現実的で管理しやすい解決策
- 関係者:専門的見地からの最適解
- 利用者:使いやすさと自立の維持
- 家族:安全性と介護負担軽減
- 私:継続的な関係構築
この状況で、各職掌や想いを把握した上で、最短でのすり合わせを行う。答えは一つじゃないからこそ、全員が納得できる組み合わせを見つけ出す想像力が求められます。
②合わせる力:相手のタイプに応じた対応変更
同じ業界でも、取引先によってタイプが大きく異なります。
主要なタイプ分類:
- 管理したいタイプ vs 面倒を回避したいタイプ
- 決めたいタイプ vs 任せたいタイプ
- 詳細を知りたいタイプ vs 結論だけ欲しいタイプ
実践での合わせ方:
- 管理したいタイプ:詳細な進捗報告、選択肢の明示
- 面倒回避タイプ:ワンストップでの解決提案
- 決めたいタイプ:判断材料の提供に徹する
- 任せたいタイプ:「お任せください」で責任を持つ
この「合わせる力」により、相手が最も心地よいスタイルでのコミュニケーションが可能になります。
③接遇:苦手を作らない基盤スキル
例えば、BtoBtoCの長期関係では、苦手な相手を作ることが致命的です。特に重要なのは富裕層対応スキルです。
富裕層対応の重要性:
- 決定権を持つことが多い
- 他の関係者への影響力が大きい
- 一度信頼を失うと回復が困難
実践ポイント:
- 言葉遣い:丁寧さと自然さのバランス
- 身だしなみ:清潔感と上品さ
- 時間の扱い:相手の時間を最大限尊重
- 知識レベル:相手に合わせた会話ができる教養
また、競合他社の営業スタイルに応じて、自分のキャラクターを変えていくことも重要です。
④解決力:最後まで諦めない姿勢で信頼を築く
問題解決において重要なのは、自社の力だけに頼らないことです。
解決力の実践方法:
- 関連サービスとの連携:他業者との協力体制
- 情報ネットワークの活用:業界内の情報共有
- 最後まで諦めない姿勢:困難でも粘り強く対応
信頼構築エピソード:
ある管理者から、接遇や業者の役割について厳しく指摘を受けたことがありました。その方は「お客様に最高のサービスを提供したい」という強い想いを持っていました。
弊社の不手際でお叱りを受けた際:
- 即座に訪問して直接謝罪
- 今後の対応方針を明確に明示
- 対応状況の都度報告を継続
この対応により、訪問時の態度が少しずつ軟化。本人からの直接受注はありませんでしたが、その管理者の口添えにより、周りのスタッフから新規案件をいただけるようになりました。
厳しい人を味方につけることの威力は絶大です。
⑤タスク管理能力:継続的な信頼維持の基盤
長期関係では、抜け漏れのなさが信頼の基盤となります。
タスク管理の重要ポイント:
- 相談から解決までのスピードが全体のサイクルを左右
- 複数案件の並行処理能力
- 獲得件数・金額に直結する効率性
実践での管理方法:
- 案件ごとの進捗状況の可視化
- 定期フォローのスケジュール化
- 緊急度・重要度での優先順位付け
- 関係者への報告タイミングの設定
小さな約束も確実に守り続けることで、「この人は信頼できる」という評価が積み上がっていきます。
「厳しい人」を味方につける具体的手法

なぜ「厳しい人」が重要なのか
厳しい人は往々にして:
- 影響力が大きい(管理者や決定権者であることが多い)
- 周囲から信頼されている
- 一度味方になると強力な支援者になる
厳しい人への対応ステップ
ステップ1:厳しさの理由を理解する
多くの場合、厳しさの背景には「お客様により良いサービスを提供したい」という想いがあります。
ステップ2:真摯な対応を一貫して行う
- 言い訳をしない
- 即座に行動で示す
- 継続的な報告を怠らない
ステップ3:相手の期待を少しずつ上回る
- 求められた以上の対応をする
- 予想より早い解決を提示する
- 関連する提案も併せて行う
信頼構築をメンバーに指導する時のポイント

メンバーに信頼構築を指導する際のポイントをお伝えします。
1. まずは反応スピードから印象づける
なぜスピードから始めるのか:
- 誰でもできることだが、継続が難しい
- 即座に他社との差別化ができる
- 小さな成功体験が自信につながる
具体的な指導内容:
- メール返信は2時間以内
- 電話は3コール以内
- 約束の時間より5分早く到着
2. 「ちょっとやれば誰でもできそうなこと」で他社に勝つ
高度なスキルより、基本的なことの徹底が効果的です:
- 清潔な身だしなみ
- 丁寧な言葉遣い
- 約束の確実な履行
3. そして継続することの重要性
一時的な努力ではなく、継続的な積み重ねが信頼を築きます。
継続のための仕組み作り:
- 日々のチェックリスト作成
- 定期的な振り返りミーティング
- 成功事例の共有
まとめ

長期信頼構築型営業において、商品力で差別化が困難な業界では「個人の信頼」が唯一の武器となります。
5つのスキルの習得順序:
- 接遇:基盤となる信頼性の確立
- タスク管理:継続的な信頼維持
- 解決力:困難な状況での信頼獲得
- 合わせる力:相手に応じた最適化
- 想像力:複雑な調整における価値発揮
特に重要なのは、前任者のイメージを活用・改善する戦略と厳しい人を味方につける手法です。
これらのスキルは一朝一夕では身につきませんが、継続的な実践により、必ず競合他社に勝る信頼関係を築くことができます。
今日から始められること:
- 反応スピードの向上
- 取引先のタイプ分析
- 前任者について情報収集
- 厳しい相手への真摯な対応
同じような環境で戦っている営業マンの参考になれば幸いです。信頼構築は時間がかかりますが、一度築いた関係は長期的な成果をもたらしてくれます。