Late Night Lo-fi。
それは、眠ることのない都会の夜の煌めきを、ひと握りたなごころに閉じ込めたかのような音楽。
指と指の隙間から漏れ出る、眩く色とりどりのネオンサインは、まるで宝石のようです。
今日はそんな、Vaporwaveのサブジャンル・Late Night Lo-fiの世界を、覗いてみようと思います。
Late Night Lo-fiとは

Late Night Lo-fiはVaporwaveのサブジャンル。
都会の夜を想起させるような、スムースで洗練されたサウンドが特徴です。
アーティストは、Luxury Eliteや COSMIC CYCLERなど。
わたしにとってのLate Night Lo-fiの魅力
わたしは、幼い頃に団地で育ちました。
その団地がある地域は、同じ小学校区のなかでも、裕福とは言えない地域でした。
わたしは周りの子どもたちが、自由にゲームを買い与えられていることを不公平だと思っていたのです。
それがきっかけで、わたしは「自身の家庭の貧しさ」に異常なまでのコンプレックスを抱くようになりました。
今では、確かに周りに比べて決して裕福ではなかったし、どちらかといえば貧しい暮らしだったのかもしれません。
しかし、両親はわたしに対して、できうる限りの支援をしてくれました。
苦しい生活の中でも、そのように我が子の為に苦労をしてくれたことを、わたしは今では深く感謝しています。
また、周りの友人たちにも恵まれました。
そのおかげで、わたしはある側面ではまっすぐに育つことができました。
しかし、ある側面では、まっすぐに成長することはできませんでした。
わたしは、残念ながら、「貧しさ」へのコンプレックスから、「富」や、その「富を象徴するような振る舞い」に執着するようになりました。
わたしは、「学生時代」までは、「富」に対して嫌悪感を持っていました。
学生時代は、同世代の子どもたちを心のある場所では嫌悪していましたし、また恐れてもいたのです。
しかし、それは「憧れ」の裏返しでもありました。
わたしは社会人になると、「富」や「富を象徴する振る舞い」に執着するようになりました。
仕事の面では、その傾向はある意味で助けとなりました。
わたしは、どちらかといえば要領も悪く、仕事ができるタイプではありませんが、執着はありました。
わたしは、同世代の「誰よりも金を稼ぎたい」と思うようになりました。
そのおかげもあって、わたしはその頃、同世代の社会人よりもはるかに高い給料を貰っていました。
しかし、「富を象徴する振る舞い」(真似事にすぎなちのですが)のために、その給料全てを注ぎ込んでいたのです。
わたしは、その頃、有頂天でした。
高級車を乗り回し、夜の街でさまざまな享楽に興じました。
わたしはそこで給料だけでなく、わたしの精神も含めた全てを消費したのです。
そして、わたしは最終的にそんな世界から墜落していくこととなりました。
Late Night Lo-fiを聴くと、わたしはその頃の恥ずかしさや、その時なりの楽しさを、懐かしく思います。
こんな書き方をしてしまうと、その魅力が半減してしまうかもしれませんが、わたしにとっての率直な感じ方について記したいと思ったのです。
物事には、良いことも悪いことも、両方含まれています。
楽しいことも、恥ずかしいこともです。
青春は、無様で醜いからこそ、美しくも感じられるのではないでしょうか?
Late Night Lo-fiは、そんな「消費することのある種の美しさ」が表れている音楽だと思います。
単純に夜の街に合う、おしゃれな音楽を聴くのであれば、スムースジャズやソフトロック、AORでもいいじゃありませんか?
ミューザックでも良いかもしれません。
わざわざVaporwaveの様式を持って、一聴してチープにドレスダウンしたともいえるLate Night Lo-fiという音楽には、そんな陰影がみてとれる。
それが、聴く人の心を打つし、愛される理由だと、わたしは思うのです。
Late Night Lo-fiの名盤を聴いてみよう!
なんだが自己啓発本やスピリチュアル系のような文章になってしまいましたがご容赦ください。
これが、わたしが真剣にLate Night Lo-fiの魅力について考えてみた結果です。
感じ方は人それぞれ。
Late Night Lo-Fiの名盤を聴いて、あなただけの魅力を感じてみてください!
Luxury Elite「World Class」
Late Night Lo-fiの総本山、名盤中の名盤。
別の記事でも本アルバム中の楽曲「S.W.A.C」を取り上げました。
誰もが夢に見、そして実際に経験した「あの夜」の輝きの全てが詰まったアルバムです。
vcr-classique「LAXURY PARADISE」
ロシア・モスクワを拠点とするアーティストでLATE NIGHT VHSやFujiwara Intercomといった名義でも活動しています。
洗練された音色が織り重なり、心地よい夜の街のムードが演出されます。
わたしはこのアルバムを聴くと、田中康夫の小説「なんとなく、クリスタル」を思い出します。
COSMIC CYCLER「Special Night」
COSMIC CYCLERの音楽は他のLate Night Lo-fiの音楽と比べると異質なものにも感じられます。
野太くミドルが出たキックやスネア。力強いホーンセクション。くっきりとしたパッド。
ニヒルな男の夜の世界を彷彿とさせます。
大藪春彦「野獣死すべし」のイメージ。
midnight première「arrangements 」
midnight premièreはクールな中にも情熱が見え隠れするホーン、光り輝くようなベル、ソウルフルなベースが特徴的。
ゆったりとしたBPMがあなたに心地よい時間を提供します。
死夢VANITY「serenade season」
死夢VANITYが制作するLate Night Lo-fiのトラックは、よりクールで、少しだけセンチメンタル。
「serenade season」の曲たちを鑑賞すれば、都会の夜に漂ういくつもの人々が見た夢を追体験することができるでしょう。
夜の都会の瀟洒な世界に浸ってみよう!
いかがでしたでしょうか?
都会的で洗練されたLate Night Lo-fiの世界。
都会の夜に夢を見る人たちの数程もいるアーティストたちのなかから、お気に入りの楽曲を見つけてみてくださいね。