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豊平区民 TOYOHIRAKUMIN『メモリーレーン』を聴いて、涙する。

豊平区民 TOYOHIRAKUMIN『メモリーレーン』を聴いて、涙する。 音楽

今回の記事でご紹介するのは豊平区民TOYOHIRAKUMINのアルバム『メモリーレーン』
豊平区民TOYOHIRAKUMINは日本人Vaporwaveアーティストです。

その名前にもなっている豊平区というのは北海道札幌市の実在する区の名称。
恥ずかしながら私は豊平区を知りませんでした。
調べてみると、札幌市の南東部に位置する区だそうです。

実際に豊平区民だから、この名をつけたのかどうかは分かりかねますが、その音楽の特徴は、日本人に馴染みやすいメロディとツボを押さえた楽曲だと、わたしは思います。
さっそく、豊平区民TOYOHIRAKUMIN「メモリーレーン」を聴いてみましょう!

まばゆいあの日の記憶の断片の海に溺れる

まばゆいあの日の記憶の断片の海に溺れる
まばゆいあの日の記憶の断片の海に溺れる

このアルバムは、初めから終わりまで、一つの物語を想起させるような、タイトルとなっており、その曲たちもまた、ストーリーの起伏をなぞらえるように、喜怒哀楽さまざまな曲調の楽曲が散りばめられています。

全ての楽曲に共通して言えることは、その曲その曲のメロディが、まるで補水液のような浸透圧で、わたしのからだに馴染んでゆくということ。

それはもしかすると、豊平区民が日本人アーティストだからなのかもしれません。
日本人にしか分からない、ツボのようなものがあるのかもしれませんね。

豊平区民TOYOHIRAKUMINの楽曲はどの曲も、じんわりと私たちの耳に馴染みやすい濃度をもった液体のように、ひたひたと心にすみわたっていきます。

しかし決してそれだけでは終わらず、今にも涙が溢れ出しそうになる寸前のような、奇妙な緊張感をわたしたちの琴線にフェザータッチで触るか触らないか、焦らすようにあたえ続けてくれるのです。

時折はほのぼのとしたオルガンで、アニメやゲームの世界の日常シーンの劇伴のような楽曲を挟んだかと思うと、たまらなくドラマチックなホーンや情熱的な泣きのメロディのギターが唸るような楽曲が不意にあらわれる。

やや崩れたようでいつつも硬くしまったビート。光をあちらこちらに反射しながら揺れる、透きとおった水面のようなパッドやベル。

緊張と緩和、楽曲から与えられる試練をひとつ、またひとつと繰り返しながら、わたしはまるで春になり少しずつ雪が溶けていくように、心の感度が若き日のそれに立ち戻ってゆくことを感じます。

あと一歩、いや、あと一音でわたしは泣いてしまうだろう。
そんな気持ちに何度もさせられます。

それは、非常にスリリングな音楽体験です。
しかしそれは、身を任せて仕舞えば、とても気持ちがいい体験です。
わたしはぬるま湯の風呂の中で腑抜けたようになって、その物語的音楽に心と体を委ねてしまっているのです。

わたしは、特に「無題7」、「メモリーレーン」、「エスプレッソ」の流れがたまらなく好きです。

北海道の作家や音楽家の作品を鑑賞する際に、必ず感じるのが、過去への憧れというか、賞賛というか、そんなノスタルジーが彼らの底流にあるような気がするのです。

伊藤整blood thirsty butchersTHA BLUE HERBキウイロールからDischarming manへ、そしてkey作品たち。
そんな、一見バラバラの分野で活動する人たちやあらわされた作品たち。
そのすべてに、在りし日の記憶を慈しむアティテュードが見てとれる、そんな気がするのです。

それはわたしの思い込みかもしれません。
しかし、豊平区民TOYOHIRAKUMINの楽曲からも、そんな郷愁を感じるのです。

豊平区民 TOYOHIRAKUMIN プロフィール

Vaporwaveでは珍しい北海道は札幌の日本人アーティスト。
2013年にBandcampやSoundcloudでの活動開始しており、HKEが主宰するレーベル・DREAM CATALOGUEやカナダ・トロントのレーベルAdhesive Soundsからもリリースしているそうです。
アルバム『メモリーレーン』は東京都のレーベルNewMasterpieceからのリリースです。

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