単身赴任を始めた頃の部屋には、ほとんど家具がありませんでした。
冷蔵庫と布団だけ。
仕事を終えて帰宅しても、部屋は静かで寒い。
知り合いもいない土地で、一人きりの生活が始まりました。
当時の私は、「単身赴任なんて仕事が変わるだけだろう」と思っていました。
でも実際は違いました。
生活は想像以上に大変で、何度も体調を崩し、孤独を感じました。
それでも、その時間があったからこそ気づけたことがあります。
この記事では、家具のない部屋から始まった単身赴任生活と、その経験が私の人生観をどう変えたのかをお話しします。
内心ではすぐに決めていた
その話を聞いたとき、 私の中ではほぼ答えは決まっていた。
チャンスだと思ったし、 単純に面白そうだとも思った。
そして何より、 指名してもらった以上、期待には応えたい。
ただ、人事の話は自分一人の問題ではない。
だから、妻にはこう伝えた。
「一度、相談してから返事する」
キャリアの決断は、 生活にも関わる。
自分の気持ちだけで決めるべきではないと思ったからだ。
出した結論は「別々の土地で働く」
異動の話は、家族にとっても大きな変化だ。
慣れない土地。
生活の変化。
実際、妻は少し複雑な表情だった。
それでも話し合いを重ね、 最終的に出した結論はこうだった。
お互いに仕事を続ける。
そのために、別々の土地で働く。
私の生活はいわゆる単身赴任という形だ。
簡単な決断ではなかったと思う。
それでも、妻はその選択を受け入れてくれたのだった。
単身赴任の生活は、想像以上だった
1月、赴任してすぐに感じたのは 仕事よりもむしろ生活の変化の大きさだった。
慣れない土地。
知り合いもいない。
仕事のプレッシャーもあり、 毎週のように体調を崩した。
重い体を引きずって会社に行き、 帰宅すると何もできない。
そのまま泥のように眠る。
気づけば、 洗っていない食器が積み重なっている。
部屋には家具もほとんどない。
冬の部屋は驚くほど寒かった。
当時はインターネットもつながっておらず、 どこか世界から隔離されたような感覚すらあった。
それまで当たり前だった生活が、 どれだけ多くのものに支えられていたのか。
そのことを、 初めて実感した時間でもあった。
それでも、少しずつ前に進んでいく
そんな環境の中で、 自分が最初にやったのは大きな改革ではなかった。
まずは状況を観察すること。
焦って動くよりも、 今は耐える時間だと思った。
自分のこと。
メンバーのこと。
上司の意図。
顧客の特性。
いろいろなものを見ながら、 少しずつ動き方を考えていった。
劇的な変化ではない。
それでも、 小さな行動を積み重ねる中で、 少しずつ状況は前に進んでいった。
この経験が変えたもの
この単身赴任の経験は、 仕事だけではなく、 自分の人生観そのものに影響を与えた。
キャリアは大事だ。
仕事の挑戦も大事だ。
でも、それだけではない。
夫婦の人生もある。
それぞれの仕事もある。
二人で歩む人生もある。
どれか一つが特別に重要で、 どれかが軽いわけではない。
どれも同じくらい価値がある。
そしてもう一つ、 単身赴任をして気づいたことがある。
妻と離れて暮らして、 はじめて、以前よりも強く 妻の存在の大きさを感じるようになった。
正直に言うと、 それまでは妻のことを ちゃんと考えてあげられていなかった気がする。
恥ずかしい話だが、 離れて生活してみて、 ようやくそれに気づいた。
生活のリズムも変わった。
タバコも減り、 酒も減った。
一人で過ごす時間も増えた。
でも、そんな生活の中で思う。
夫婦で会話ができれば、それで十分なんじゃないか。
単身赴任は決して楽な経験ではなかった。
それでも、この時間があったからこそ 気づけたことも多かった。
キャリアの決断は、 自分一人で完結するものではない。
周りの人の人生とも重なりながら、 形を作っていくものなのだと思う。

